質問		回答
［1］スライド35ページに必要な研究としてあげられております神経変性疾患についてですが、これは、現在までの知見として何がわかっているのでしょうか？ ALSやアルツハイマー病などが電磁界によって発症するということでしょうか。それともそう言った疾患を基礎に持つ人への影響が大きいということでしょうか。		［1］職業環境での電磁界ばく露とALSおよびアルツハイマー型認知症について疫学研究がされています。電磁界ばく露のレベルが特に高い職業者に対しての疫学になっています。いずれの疾病に対しても磁界の影響がある、もしくは影響がない、との相反する結果が出ており、結論は出ておりません。疫学研究は発症率で評価しておりますので、現在の検討項目としては発症が増えるか否かと言うことだと思われます。症状を悪化させるのかについては、私に知る範囲では今のところ検討されていないと思います。

［2］神経変性が電磁界によって起こりうる可能性がありますか？		［2］疫学研究からは、その可能性が否定できない、という状況と思われます。より正確に申し上げれば、電磁界の影響があるのかわからない、という状況になります。メカニズムの観点からは、極めて強い電磁界によって神経が繰り返し刺激されれば神経細胞死が起きることは可能性として指摘できますが、そのような研究はまだされていないと思います。

［3］低周波電磁界の人体影響に関する研究結果の詳しいレビューをありがとうございます。大変勉強になりました。さて、スライド２９（最近の小児白血病疫学研究２０２０）では、小児白血病についての国際共同研究において、磁界との関連性は弱まっている、とのまとめが出ています。しかしながら、ヨーロッパの一部の国では磁界を小児白血病に対するプレコーションの対象とみなされているようです。ここで、磁界と白血病発生の関わり合いを最初に指摘したN. Wertheimer先生の論文を思い出すと、磁界に曝露された水道水の影響かも知れない、と言う間接的影響の可能性の一例が言及されていたと記憶しています。磁界の間接的影響としては、入浴中の子供への蛇口からの微小電流の通電現象が知られていますが、　この微小通電が小児白血病を誘引するとの医学的知見はありますでしょうか。そのほかの間接的影響について言及している論文は何か出ておりますでしょうか。よろしくお願いします。		［3］ご指摘のとおり、比較的最近ではEPRIのKavetさんが水道管からの接触電流による影響を指摘しておりました（https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1241532/）。電気工学的な観点の詳細は理解できていないのですが、日本など他の国では米国とは異なり、水道管をアースとして使用しておらず、そのような接触電流によるばく露が生じないと言うことで、現在では水道管からの電流による影響は考えられなくなってきていると聞いております。なお、小児白血病発症メカニズムとして、電流や電圧などが関与しているという報告は把握しておりません。現在、BfSで行われている小児白血病関連研究では、電磁界の免疫系への影響を介した小児白血病発症メカニズムに着目しております。これは、疫学研究から、小児白血病の発症に免疫系が関与していることが示唆されたことから行っているものですが、どの様に関与しているかについての分子的なメカニズムについてはまったくわかっておりません。

［4］文中にあります「電磁界の免疫系への影響」とは、具体的には「磁界によって誘導される体内微小電流の免疫系への影響」と理解してよろしいでしょうか。		［4］当該研究グループでは、動物実験にて、磁界ばく露によって免疫系が影響を受ける可能性を指摘しておりますが、その作用メカニズムは不明です。従いまして、個人的な見解になりますが、必ずしも誘導電流の影響であるとは言えないのではないかと考えております。著者が明記しているわけではありませんが、磁界、誘導電界、誘導電流のいずれも候補になりえるのではないかと考えております。