劣化ウラン:健康と環境への影響 名古屋大学大学院 飯田孝夫


劣化ウラン:健康と環境への影響

                                                              名古屋大学大学院 飯田孝夫

背景:2004年6月14目(月)講演会
会場:名古屋アメリカン・センター
講師:テレンス・テイラー(国際戦略間題研究所副所長)
資料:The Roiyal Society:http://www.royalsoc.ac.uk/policy/cur.du.htm
    WHO:http://www.eho.int/iozing.radiation/pub.meet/ir.pub/en/

 1.The health effects of depleted uranium munitions Summary 7pages
 Part1(2001):80pages (放射線の健康影響)
 Part2(2002):134pages (放射線以外の健康影響)

関連事項
湾岸戦争(1991)340t→湾岸戦争症候群?
バルカン紛争(1990年代後半)11t
DU(depleted uranium):化学毒性、弱い放射性物資

健康影響
(l)放射線の影響
DUによる被曝経路:吸入摂取、経口摂取、負傷
装甲車へのDU攻撃:微粒千の発生→DU粒子を吸入
最悪のケース:肺とリンパ節が被曝→肺がん
攻撃された戦車内で生き残った兵士の1/1000の致死肺がんリスク
他の兵士のリスク:1/40000
白血病等他の癌のリスクは肺がんより低い。
参考:肺がんリスク 1/250(非喫煙者)、1/6(喫煙者)

(2)化学毒性
ウランの化学毒性を最も受ける器官:腎臓
50mg/g 腎臓:数日内に腎臓の機能が喪失
3mg/g 腎臓:職業人の限度
1mg/g 腎臓以上で急性障害
攻撃された戦車内で生き残った兵士に急性障害の可能性はあるが、慢性障害は不明
急性障害の例は知られていない。

(3)他の健康影響
大量吸入による呼吸器疾患:肺がんの影響が第一
骨への沈着:DUの取り込みかどうか特定できず
DNAの損傷:化学的影響はα線により強められる。

(4)他の証拠
尿中のDUの測定

(5)環境影響
DU粒子の再浮遊→吸入、食物への沈着
土壌中に埋まっている砲弾(70〜80%)→地下水、食物
→吸入摂取、食物摂取は滅少、地下水汚染は増加

結論
a. DUの内部被曝による致死がんの発生は検出できない
b. 特別な状況:攻撃された戦車内の生存兵士、攻撃された車両の清掃
→肺がんリスクが一般人の2倍
c. 白血病や他のがんのリスクは肺がんのリスクよりかなり低い
d. DU弾の使崩による放射線リスクは低い。被曝のレベルが不明であるので研究を続ける必要がある。
e. 大部分の兵士は戦場で0.1mg/g 腎臓を超えていない。悪影響は予想されない。
f. 特別な状況:腎臓機能に障害、慢性障害は不明。米兵は超えていない。
g. 再浮遊DUの吸入→肺がんリスク 1/1000000
h. 再浮遊DUの吸入→腎椎蔵機能への影響なし
i. 汚染された地下水や食べ物の摂取に注意が必要

勧告
長期間の疫学研究
・DUエアロゾルに曝露した兵士のがんや腫瘍発生の追跡調査
・生まれてくる予供への影響の疫学調査、マウスでは証拠はない。
・長期間の水やミルクなどの環境調査
・DU汚染地域での子供のリスク
健康影響の監視
・高い被曝のUK退役軍人の特定と評価プログラム
・DUの高摂取者の高感度機器による腎機能調査
・尿中のウランの同位対比の調査
・湾岸戦争時の米国の高被曝の少数の退役軍人の調査
・肺がん以外のリンパ節のがん
・大量被曝による腎臓や肺の・急性の重篤な障害
将来の研究
・装甲車を攻撃したときのDUエアロゾルの調査
・DU被曝のモデル化
・酸化DUの挙動の調査